|
評価:
情報センター出版局
¥ 1,680
|
以前からこの本には注目をしていたが、ようやく本日読了(とはいえないか)。 エピソードとエピローグはじっくりと。間はザーッと。
著者がルポしたのは2003年から2004前半にかけての半年間。2005年出版で、4年前のアマゾンの倉庫で働く労働者の様子がよくわかる。当時は、ちょうどアマゾンが日本でぐんぐん伸びて行くところで、現在は、ネット書店というよりネット総合小売店にまで拡大したアマゾン。サイトリニューアルもした品数もかなり増えた。2005年で800億円の売り上げらしいので、売上高は1000億円を優に超えているのかな。また収益は黒字転換している?ここらへんアマゾンは秘密主義でウェブで探しても数字が出てこない。
世界同時不況と呼ばれる2008年後半からの不況の影響も、アマゾンはどこ吹く風であまり受けていないように見受けられる。しかし、それを支えているのが、単純労働を強いられたアルバイトや派遣で、そのどうどう現場の様子をこの本で読むと、たくさんアマゾンを利用している自分かかなり、複雑な心境となった。 4年前と今は変わっているだろうか。さらに労働強化になっているのだろうか、それとも待遇改善されているのだろうか。
2008年は「蟹工船」ブームが起爆剤となり、それまで着実に進行していた格差社会の構造が、あらわになってきた年だといえる。で、アマゾンでは以前からそのような格差構造をつかって効率化、コストダウンを推し進め、それが「顧客第一主義」の看板を支えて、僕ら顧客が「アマゾンっていいよね」とその便利さを嬉々として享受しているわけだ。
うーん、ITは人類みんなを幸せにするのではなく、一部を幸せにするもの、勝ち組と負け組みを生み出すものとして機能してしまうのだろうか? 「便利」だけで本当にいいのか、改めて考えてみたい。
ps) 印象に残る言葉はエピローグで引き合いに出されていた部分、
”企業―正社員システムは給料だけでなく、アイディんティティも供給している”
仕事が人生の中で大きな位置を占めるのだから、仕事に誇りを持って携わることができないのは、生きがいを見出せずに、生きることは、幸せな生き方とはならないだろう。他にアイデンティティを見出せるところがあればいいのだろうか、だれでも生計を立てる手段が必要だ。企業で働こうと、自営で働こうと、仕事にアイデンティティを見出せること、いまの世の中ではとりわけ貴重な価値観ではないだろうか(昔の人たちはどうだったんだろう)。
(Ps2)どうやらアマゾンが国内書籍販売1位になっているのでは、というエントリ発見。
*しかし、このエントリで紹介していた、リアル書店の売り上げ推移を見ると、現状維持もしくは右肩上がりになっている。ということは、リアルの書店でも本が売れている>出版業界冬の時代、っていうのはウソ?アマゾンも儲かっているんだし、実際のところ、どうなんでしょ。